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本家西尾八つ橋 八つ橋だより

2012年7月 1日

7月の京都、祇園祭。

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夏の始まりを告げる景色


日本三大祭のひとつ、京都の「祇園祭」が今年もいよいよ始まります。

風光明媚(ふうこうめいび)な古都として知られる京都ですが、年間を通しての寒暖の差は、なかなかに激しいものがあります。そんな京都の厳しいの夏の始まりを告げるかのように、町中にはビルの谷間にいくつもの鉾や山がそびえ立ち、風景がかわり、人の動き(交通)もかわる。まさに京都のもうひとつの顔が顕われるようなひと月間、文月(ふみづき=七月)のはじまりです

長い歴史をもつ祇園祭。当然といえば当然ですが、古えより伝えられた多くの伝統技術がそこここに見られます。

たとえばそのひとつ。鉾(ほこ)や山を組立てる「縄絡み(なわがらみ)」という技法があります。



縁の下の伝統技術「縄絡み」


祗園祭の鉾(ほこ)に、ねじ釘の類いは一切使われていません。 すべては木組みと、それから縄絡み(なわがらみ)と呼ばれる、古くから伝えられた独特の縄締め(なわじめ)の伝統技法によって組立てられているのです。
縄がらみにはたくさんの組み方があり、蝶(ちょう)、亀(かめ)、鶴(つる)、海老(えび)、八幡巻き(はちまんまき)など、鉾によって独自の形があります。 「手伝い方」「大工方」と呼ばれる職人さんたちによって組まれ、丁寧に、美しく仕上げられた縄がらみは、仕上がった後は「懸装(けそう)」と呼ばれる豪華な織物などの装飾によってすっかり隠されてしまいます。
毎年のお祭やそこに参加する人々の安全を見えないところからしっかり支えるこの伝統技術は、まさに祇園祭の「縁(えん)の下の力持ち」、なのです。

nawa.jpg縄がらみ
中央のプロペラのような箇所が「蝶」です

「遊び」のある強さ


てっぺんが遠くに見える、そびえ立つような祇園祭の鉾(ほこ)ですが、大きさをご存知でしょうか? 高さはなんと約25メートル。総重量はおよそ10トンだそうです。(重いもので12トンほど) 巡行などで、動く鉾を間近で見ると「ギシッギシッ」というきしみ音が聞こえることがあります。これは決して壊れそうなのではなく、木や縄で組み上げる時に、少しゆるめに組むことによって「遊び」を残し、その「遊び」が鉾が揺れるときの衝撃を吸収してくれているのです。この「遊び」と「きしみ」こそが巨大でしかも背の高い鉾に、40人もの人が乗って引き回しても決してくずれたりはしない、強さの秘密なのですね。

「遊び」と言えば、もうひとつ。
この縄絡みの伝統技法は、ただ伝えるだけではなく、今も新しい組み方が創りだされ、祇園祭でお披露目されることもあるのだそうです。伝統の継承は「厳格な保存」にあらず。移り変わりをも含めた「変遷(へんせん)」こそが大切と言えます。(西尾のお菓子も、そうです 西尾八ッ橋の歴史
「縄絡み」のみならず「懸装(けそう)」でも、現代の作家さんのデザインが採用された織物などが創出されています。この、厳格な中にも「遊び」があり、伝統を守り伝えながらながら、同時に時代の空気をとりこんでいることこそが、「祇園祭」が活きいきとした魅力的な町衆の祭りであり続けている理由なのではないでしょうか。

junkou2.jpg山鉾巡行 ー月鉾ー


奥深い魅力

祇園祭を語ろうとする時、その切り口には際限がありません。
祈りであり、伝統であり、歴史であり、謎めいた多くの異国情緒を見つけることができる動く美術館でもあります。山鉾それぞれに歴史や継承者の想いがあり、また、祇園祭を支えることで、同時に支えられている伝統技術やその継承者も数多くあるでしょう。

宵山と巡行だけではない、その背後で繰り広げられている沢山のドラマのひとつに焦点を合わせてお出かけいただいても、きっと新しい祗園祭の魅力を見つけていただけるでしょう。


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【縄絡みはいつどこで?】
縄がらみは、完成してしまえば隠されてしまいますので、7月10〜13日にかけて行われる鉾立てを見学するのが一番です。特に覆いもなく、鉾を建てるその場での作業ですので、運が良ければ職人さんたちの手さばきを間近で見ることが出来ます。ただし、人の命がかかったお仕事ですので、決してジャマをしないこと、車道に出ないなど、くれぐれもご注意くださいませ。