大晦日の深夜から明け方まで、四条通りから八坂さん界隈は、「をけら詣り」に詣でる人々でにぎわいます。
京の年越しを代表する行事「をけら詣り」は、八坂神社の境内3カ所の「をけら灯籠(どうろう)」より、「白朮(をけら)」を燃した御神火をいただき、その火で作った元旦のお雑煮を食すと、一年間を無病息災で過ごせるというもの。「吉兆縄」にいただいた「をけら火」は大切に、くるくると回しながら持ち帰ります。
「をけら詣り」は、正式には「白朮祭(をけらさい)」という名の古式ゆかしい八坂神社の神事。12月28日の鑽火式(さんかしき)で、火鑽杵(ひきりきね)・火鑽臼(ひきりうす)で"御神火"が起こされるところからはじまります。
御神火は、まずは本殿の中の「をけら灯籠」に移され、大晦日の夜、その火が境内3カ所の「をけら灯籠」に灯されるのです。
「おけらまいり」と聞くと思わず虫のオケラを連想してしまいますが、白朮祭の「をけら」はお茶花にも使われる、風情のあるキク科の野草。アザミに似た白やピンクの花を付けます。根や茎を乾燥させたものは白朮(ビャクジュツ)という生薬として、若芽はおいしい山菜として万葉の歌にも歌われるほど一般的に食されたようです。また、「をけら」は燃やすと強い芳香を放つことから、邪気を払う"厄除け"として招福除災の行事などにも使われてきました。
お正月のお酒「お屠蘇(とそ)」には、桔梗・防風・山椒・ニッキなどに加えて白朮も使われ、新年の厄を払うと同時に、身体をあたため風邪を引きにくくする薬酒でもあるのです。
有名な「八坂さんのをけら詣り」の他に、京都ではもう1カ所、「北野の天神さん(北野天満宮)」でも「をけら火」をいただけます。菅原道真公をご祭神とするこちらは、学業成就のご利益があるとのことで、元旦には合格祈願の受験生で大賑わい。「をけら火」で炊いたお雑煮にも、ご利益がありそうですね。
「新年の一番初めの家族の食事のために御神火をいただく」ことから生まれる、夜道に点々と浮かぶ小さな赤い火の景色。
京の大晦日の風物詩を、どうぞお楽しみください。
【をけら詣りはいつどこで?】
■八坂神社 をけら火授与・・・12月31日 夕方〜元旦早朝
境内3カ所の「白朮火授与所」にて。( 吉兆縄は、参道や境内で購入します。)
*詳細は 八坂神社 HPにてご確認くださいませ。
■北野天満風 火縄授与・・・12月31日 夜〜深夜
*詳細は 北野天満宮 HPにてご確認くださいませ。
*深夜ですが大変混雑しますので、万一火にふれても燃えにくい服装でお出かけください。
*バスや電車など、終夜運転がありますが、火を持ち込むことは出来ません。ご注意くださいませ。
*どうしても公共の乗りもので「をけら火」を持ち帰りたい、という方にはハクキンカイロなどに火を移すという裏技もあるようですよ。